リコ。大陸の大気団が徐々に近づいてきて、冬の気配を感じずにはいれません。冬になると私たちは、お城の裏手、椿ケ谷へいって遊んだものです。
日曜日の朝、お父さんの車に乗せてもらって、私たちはお城へ向かいました。雪のせいで、橋はもう真っ白になっていて、手すりの上にある玉ねぎみたいな擬宝珠(ぎぼし)の上にも、こんもりとした雪の屋根が覆いかぶさっていました。その雪をとって、お堀へ投げてみる。固くなった水面は、私たちのような子どもの投げる雪玉ではびくともしません。投げた雪玉が星のように、くだけていくのを見ていました。橋を登り切ったところに、道に傘をさすように大きな落葉樹がせり出しています。それはなんとも言えず、不思議な枝ぶりをしていて、ある程度まで水平に伸び、ある一線に達すると垂直方向へ伸び始めるのです。ちょうど何かの若芽のように。私はその姿を、城山のもった大きな手のように思っていました。雪は枝の一本一本にすきまなく乗っかって、森は雪の姫の城、冬の彫刻のように見えました。
私たちは何をするのでもないのです。ただ椿ケ谷を散歩して(そこにはもちろん、真っ白になった椿が立っていました)、雪が自然を覆い隠すさまを眺めていたのです。朝の光線には、人間活動のちりやほこりが含まれていないから、あれだけ透明なのかもしれません。木々から漏れるガラスのように透明な光線が、雪をお堀のせせらぎを照らしていました。私はいつもより、視力がましたように、草の端の姿かたち、森の木々の枝ぶりまで、くまなく見渡せる気がしたのです。
それもやはり、冬の朝の光の魔法ということなのでしょう。じゃあ、また。
マコ