リコ。雪が積もってしまいました。ああ、私はなんていう大人になってしまったんでしょう。雪が積もってしまいました、だなんて。雪はさておいて、寒さがいけないのかも知れません。身体はもう、春の準備をしていたから。寒さの小さな兵隊達の奇襲作戦に、コートの裾際でみじめな敗戦を続けているのです。私の身体は撤退して、コートの中心まで縮こまってしまうのかも。
リコは漂流郵便局を知っていますか?瀬戸内の島にある本物の郵便局(通常の郵便業務はしていないのですけれど)。久保田沙耶さんという現代アーティストが始めたプロジェクトなのです。
どこに届ければいいのか分からないもの、こと、ひとへ、過去、今、未来のもの、こと、ひとへ、その郵便局へ手紙を出すことが出来るのです。手紙は郵便局留めになって、いつか、本当にその名宛人が現れたとき、はじめて<配達>されるのです。
これはなんて素敵なプロジェクトだろう!と、私は思いました。どこに届ければいいのか分からない思いが、誰にだってあるのです。漂流郵便局は、その思いを片方だけ背負い込む。そして、所在不明の名宛人の到来を、いつまででも待っている。
リコへの手紙だって、どこに届ければいいかも分からないこの気持ちを、文字に現してみるところから始まりました。その気持ちの発端は、漂流郵便局と同じでしょう。
人は、伝わらなくても伝えたい気持ちを、抑えることは出来ないのです。
マコ