リコ。長い間、書きませんでした。ごめんなさい。実は先日、貧血で起き上がれなくなって、ずっと病院にかかっていたのです。それはカフェへ出勤する日の朝のことでした。めざましがなると、眠りのうちから始まっていたであろう吐き気が、目覚めを合図に一気に襲ってきたのです。その波をさらに呑み込むようにして、全身のしびれがやって来ました。少しだけ、深呼吸して、全身をなだめすかして見ます。5分間が経ちました。それからトモコさんに電話をかけて、今日は休ませてもらうように言って、次にタクシーを呼びました。私はパジャマを着替えるのもそこそこに、病院で診察を受けたのです。まず第一の症状は貧血でした。でも念のためということで受けた検査で(生理も含めて、体内で異常な出血をしているのがそもそもの原因なのですから)、「子宮筋腫」であることが分かったのです。診察室でその言葉を聞いた時、「腫」という文字に連なる「腫瘍」という響きが、私をぞっとさせたのです。医師はなるべく慎重な言葉で「万が一、悪性のものである可能性を排除しておきたい。MRIで状況が確定します」と言って、MRIの予約と貧血の薬の処方をしてくれました。「子宮筋腫は珍しい病気ではないし、悪性に発展するケースは極めて少ない」と医師はやさしく言ってくれましたが、私の耳にはうまく入って来ませんでした。
私は帰りのタクシーの中で「子宮筋腫 悪性」と検索していました。こういう時は、ものごとを悪い方へ悪い方へ、考えてしまいがちです。スマホの画面に「子宮全摘出」という文字をみつけて、お腹がしめつけられるように思いました。いつでも何かがお腹の中にごろごろしているような気がする。それはなにか、黒っぽいもので、私ではない何者かなのです。「大丈夫、最悪である確率は低い。今はただ、やれる事を一つひとつやるだけ」そう、思いながら家路へついたのです。
「うん・・・・・・そう。マコちゃん、しばらく休みなよ。身体のこともあるし、気持ちも整えないとね。こういう時のための店長なんだから!もし一人で辛くなったら、カフェにお茶しに来てもいいし。ずっといたっていいんだから」トモコさんのやさしい声かけに、電話越しで涙を流しました。私はMRIの結果が分かるまで、店を休ませてもらうことにしました。あいにく市立病院の予約は立て込んでいて、検査は一週間先でした。私は、待つことを課せられたのです。
リコ。人生を左右するかも知れない大きな問題を前にして、私たちはどのように、待つことが出来るのでしょう?検査は明日です。私はこの一週間してきたように、今日もまた拝みます。温泉の谷の小さな神社で、誰のためでもなく祈るのです。私は今日も仰ぎ見ます。水うみのほとりの夜、あの星々の光。むかし、一人の詩人がやったように、野原の中、大きな空の下に眠る。そのようにして自然と一対一に向かい合い、ただ与えられるものに身をゆだねている。そういう気持ちで、私は待っています。
マコ