リコ。なんだか最近元気がなくて、普通なら雪を喜ぶ私が、文句でもいいたげなしかめっつらで、雪の覆った道をザク、ザクと歩いています。空に張り出したシベリア気団が、とおい異国の地の憧れを誘うはずなのに、そんなこともなく、空はただ何となく、青色をしていただけでした。
家へ帰って部屋の電気をつけます。部屋の隅っこに、書き物をする白くて蝋で出来たようにすべすべしたテーブルに、焦げ茶色した木箱が置いてありました。それは、今まで書いて、出さずにおいたリコへの手紙が入っている箱なのです。箱の中で何重にも重なった便箋を眺めていると、たくさんの出来事、リコへ向けられた親密なやさしさが私の心に蘇ってきます。それは澄んだ池からの湧き水のように、私の心の中を流れていきました。
そうだ。私には書くことが必要だ。リコへ。それがさっきです。こうして私は、最近の不調の原因を突き止めることが出来たのです。私はリコへ手紙を書くことで、リコに知らせたいこと、この世界の素晴らしい点を数え上げていたのです。赤ん坊が何にでも触って、この世界が安全であることを確かめるように、私は書いてきたのです。
そう思うと、全てのことが腑に落ちました。私に必要なのは幸福でもない。何か気の利いた気晴らしでもない。ただ、書くこと。ここに生きるための仕組みが隠し込んであったのです。
というわけで、今日はこの辺で。またね。明日は積もりそう。気を付けましょう。
マコ