2017年1月9日

オレンジのサーカス隊

リコ。雹がふりました。雨が雹にかわって、やがて雪に変わるでしょうか。そうして冬は深まっていくのです。

今日友達4人と新年会をしました。その帰り、私は川縁の道を家までゆらゆら、歩きました。その川とは、この街を北と南に分けている大きな川のことです。この街の人が光に対して細心の注意を払ったことに私は感謝していました。というのも、川辺の柳並木にそって、江戸風の行灯を模した街灯が列を作って並んでいるのです。上にはかわいい屋根。中が白熱電球でなければ、小人の生活する灯りが洩れているかのようなのです。火照った体にはちょうどよいくらいの風が柳を揺らし、街灯が足元を照らしていました。ふと顔をあげると向こう岸にも同じもの。街灯の灯りが、水の上に、オレンジに映っています。灯りを映す水面は、この世とあの世の境界線。葬り去られた記憶の中で、私はいつか見た、サーカス隊のテントの景色を思い出していました。リコと、お父さん、お母さんと見たサーカス隊の灯りも、あんなふうに、ゆら、ゆら、と空間の不思議を掻き立てていましたっけ。

自動販売機で温かいコーヒーをかって、岸辺で飲みました。私は夢を見ているようでした。それともこの街が夢なのか。この街は眠りの中にある。いつか誰かがそういったのを思い出しました。そこへじっと座り、体の芯へと冷たさが染み込み始めたころ、私は歩き出しました。もうじき私は家に着き、夢を見たまま寝床へ入るのです。

その前にリコへは手紙を書くこと。ほら、忘れなかった。じゃあ、おやすみ。

マコ