リコ。私たちは美しい存在ではない。全くの逆で、汚らしい、愚かな、とるに足らない存在です。もしそうでなければ、なんで飢えている人を知りながら、笑って食事をしていられるのか。もしそうでなければ、なんで人を嫌い、その人に災厄が降りかかった時に、しめたものだと思うのか。もしそうでなければ・・・・・・。例をあげれば切りがない。私たちの世界は、平穏とは真逆の世界なのです。
その中でもあるときだけ、世界の人々が美しくなるときが来る。それは真赤な大きな夕焼けのとき。私たちは手もとの仕事をやめて、その大きな夕日を眺める。その瞬間、この国中のたくさんの人がたくさんの場所で、同じ一点を見つめている。自然なるものに感情を動かされる繊細な心のはたらきは、美しい。それをたくさんの人がもっているということも、美しい。そうして美しいすべての魂は、夕日によって赤く照らされる。そのとき人々は、山々と雲と、ビルと水平線と同じに、一つの夕焼けの風景になる。
私たちの美しさは、このようにして、恩寵のように現れるのです。その美しさを、この命が終わるまでに、いくつも見つけてみたい。それが私の願いです。
マコ