リコ。なんだか寒さが逆戻りして、夜には冷たい風が吹いています。こういう時が、一番危ない。風邪をしないように、しっかり支度して布団に入ろうと思います。
今日は一日中、雨が降ったりやんだりしていました。カフェの窓から外を眺めると、一面の曇り空でした。それは曇り空とも言えますけれど、全体に霧が下りてきているという方が正しく、灰色の同質で大きな壁が、地平まですきまなく迫ってきているという感じでした。私はそれを見て、まるで舞台の背景のように思いました。
舞台の大道具が簡単なものであるとき、舞台の最後にかかっている薄灰色のサラサラ光る布が目立って見えるのです。だから今日はこの街を舞台にして、街の人たちが何かを演じているように思いました。みんな自分が主人公の、本当の劇を演じている。
でもこれは本当のことだと思います。みんな、生きてる理由なんて分からなくて、死んでいないことが生きていること、ただ先にある死を一日一日引き延ばしているだけだと思うのです。社会の側から言っても、一人の人間の生きている価値などまるで無視できるほどの価値しかもっていない。工場で作られる何かの部品で、何千回かに一回のエラーが起きる。人の命は、その程度の重みしか持っていないのです。その中でさえ、人は十分生きるに足る人生の意味を、見つけることが出来ると思っています。たとえ時間と多くの忍耐を必要としても。
そのときやはり人は、この世界という舞台で本当の主人公になれる。金銭的な豊かさとか、知識水準の代わりに、生きている意味を見つけた人の多い社会が、幸福な社会だと言えるのかも知れませんね。
私の場合、リコのことで生きる意味を見出だした。リコを背負って生きていくつもりです。
それでは、またね。
マコ