2017年12月9日

雪のかがやき

リコ。もう随分さむくなりました。アパートの駐車場へ車をとめて空を見上げると、空を覆う大気が結晶化して、キラ、キラ、とまたたくように思います。それはレースのように柔らかな織りの、ガラスで出来た自然のシャンデリアのように。飾り付けられた夜の観劇場で、私はある思い出を夢見ました。

それはまだ、私たちがうんと小さかった頃のことです。お父さんの発案で、隣街の高い山へ車で行って見ることにしたのです。季節はちょうど今くらい。私たちの街からも、その高い山は天気の良い日は見えました。もう、冬のことで、そのときその山は白く色づいていました。父は私たちに、一足早く雪の世界を見せたかったのだと思います。私たち家族はーお父さんとお母さん、それにリコと私はー完全な冬支度を整えて、車にはチェーンを巻いて、山へ出かけました。

その頃はまだ、雪が沢山降りました。北の海の街らしく、雲はどっさり雪を運んできてくれたのです。山の中腹の公園へ降りると、もう腰まで雪に埋もれてしまう。落葉しきった木々の姿は、魔女の細い指先か焼き芋のあとの細いけむりの幾筋かのように見えて、そこへ一つ、一つ、丸い雪のお団子を誰かが置いていったみたいに見えました。雪のうえに、小さな動物の足あとが、森の奥深くまで続いていて、私たちはリス、とかネコ。それかキツネと話し合ったのでした。そこでお父さんとお母さんはコーヒーを飲んだり、私たちはココアを飲んだり、脚のつまさきが少ししびれてくるまで、雪の世界の中で静かな空気を吸い込んだり吐き出したりしていたのでしたね。

それはまるで、きらきら輝く雪の夢。今だってなつかしく思い出すことが出来るのです。さて、ご飯をつくって暖かくして、今日も夢の世界へいくことにします。またね。

マコ