マッチ売りの少女がちいさな灯りに最後の夢を見てたとき、空は彼女に笑いかけたのでしょうか。いいえ。空は笑いはしない。空は、徹底した、冷酷な吹雪を、彼女に吹きつけた。彼女は守られなかった。ただ彼女のスカーフに転がったままの雪だけが、かわいい花の紋様によって、彼女の夢をふちどっていたのです。
幾世代か前の昨日とそしてあさって、空は高熱の閃光そのものになって、あの人たちの上に降り注いだのです。そう。空は笑いはしない、決して。今その兵器は世界中にあふれ、今しも空の制圧権をめぐって、歴史の巨人と新興の挑戦者が争っている。私たちはその空の下に生きている。毎日を大事に、大事に。それがすぐに溶けるような、ちいさな雪の結晶のようだとしても。
リコ。なぜ私たちはこんなに弱く生まれてきたのでしょうね。それなのになぜ、こんなにも強く生命を想うのでしょうね。
盂蘭盆会の前に。
マコ